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第1話~第3話(2010Xmas)



『ジドールの7つのツリーにお願い事すると願いが叶うんだって』

 女性ならば好きそうな話題を耳にしたロックが、セリスにこの話題を教えたのはつい先日。

 ベクタで復興を手伝いながら暮らす、2人の小さなお話。

 

第1話:始まりは殺人的スケジュール

 

「今年は、ジドールで年を越すか」
「そんなに休暇を取るなら、頑張らなくちゃね」

 微笑むセリスの手元にある勤務表を見て、目を丸くする。シフト表の出勤欄を凝視するロックに、セリスが不思議そうな顔をした。天使のような微笑みで小首を傾げるセリスをみても、今日だけは愛しいと感じるのが二の次。何度セリスを見ても、背筋に悪寒が走り、共に脂汗が流れるのだ。
 問題は、セリスの持つ出勤欄。今は11月25日だと言うのに、どうみても、ロックに12月24日より前の休みが無い。

「セ、セリス、さん?」
「どうしたの、ロック。あ、ココア飲みたかった?」
「いえ、あのですね?」
「なんだ、お腹空いたの? ちょっと待っててね」

 約1ヶ月、休暇無し。どう考えても、ハメられた感が拭えない気持ちでいっぱいになり、ロックの冷や汗は止まらない。

(なんか、誰か今月辞めるとか言ってた気が……それ、か?)

 必死に思案を巡らせれば、思い当たる節にぶつかって納得をする。確かに、昨日は自分の誕生日で2人共休みを取ったが、それが最後の休日だとは流石に予想もしていない。これでは、セリスにプレゼントを買いに行く暇すらない――。

「ロック、お皿出してー?」
「あ、あぁ」

 きっと彼女は、シフト表に抗議を認めないだろう。セリスは鉄道開発計画と映像通信所の計画が出た時から、がむしゃらに頑張って来たのだ。

(いや、毎日仕事は諦めてもいい。クリスマス以降をセリスと過ごす為だと思える。だけど、)

 スケジュールの出勤時間がどう見てもおかしい。どう計算しても、最低14時間労働だ。どんなに目を凝らしても、半休などは見当たらない。これにイレギュラーが発生すれば、気が狂う勤務時間になるのは軽く予想が出来る事。あまりの事に鼻水が出そうになって、ロックは慌ててティッシュで鼻をかんだ。

「風邪?だめよ、今風邪なんか引いたら」

 「忙しいんだから」と言葉を続けるセリスの手は優しくロックの額に当たる。「だだだ、大丈夫だって。ネギ食うから」と慌てるロックには、最早何を自分で言っているかが解らなくなってきていた。
 勿論、ロックだって努力を怠った事はない。彼は鉄道開発や映像通信所の計画が出る前に、トレジャーハンターである経験を生かし世界地図を製作した功績を持つ。ベクタに来た2人の下へ鉄道開発計画がフィガロ国から出たのも、ロックが1年を掛けて世界地図製作に携わり、地の利を生かせるからという所が大きな理由なのだ。

(俺とセリスが此処で働くようになったのって、あの世界地図が始まりだもんな)

 瓦礫の塔が崩れてからの3年間を、セリスからココアを受け取りながらゆっくり振り返っていた。
 たった1年で世界地図が完成したのには理由がある。世界地図を作製していた当時、ロックは仲間に協力を仰いでいた。カイエンを引き込んでドマ城から各国歴史書を持ち込み、フィガロ国から測量機械を借りる事に成功。その後はジドールの街で一番の資産家であるアウザーをスポンサーにつけると、セッツァーが『面倒だが、新しい飛空挺を造るにも、金がいるからな』と飛空挺ファルコンを提供してくれた。

『新しく飛空挺作るんなら、次はどういうのにするんだ』

 セッツァーに聞いたのはロック。浪漫を追い求める割に現実主義者、という不思議な共通項を持つ2人は、案外話さなくても理解出来る事がある。

『栄華、世界最速、命の賭。どれも面白かったけどよ、…違うモン、追い掛けてみたくなってな』
『……そうか』

 2人に言葉はそれで充分。この会話で、協力を得られる理由を知った。きっとそれは、ロックやセリスの目指す物とは遠くて近い、何か。それを叶える為には、いずれセッツァー自身にも、世界地図が必要になるだろう。
 元々、トレジャーハンターを営むロックは世界中にある前人未踏の地への知識が豊富である。世界崩壊後も世界中旅を続けていた為小さな街にも非常に詳しい。なおかつ友人達の厚い協力を得られた為、結果1年で完成したのだ。
 協議の結果、世界地図の権利は協力者のカイエンが持つ事になった。地図の印税のほとんどは、ドマ国復興の資金に充てている。

(それからカイエンは、ドマ鉄道の資料を快く貸し出してくれて)

 興味を持ったフィガロ国王エドガーと、帝国から元の国へと領地返還されたマランダ、ツェン、アルブルグ各国がスポンサーに名乗りを上げたのだ。

(セリスが嬉しそうな眼してて、資金に余裕もあるし、ベクタでやってみようかって話になったんだよな)

 世界地図を作る陣頭指揮を取ったロックには、印税から莫大な報酬が支払われていた――勿論、フィガロ国やセッツァーにも。

(資金はあっても時間がないとか、どこの王様だよ。プレゼント、いつ買いに行けるか…)

 正直な所、こんなに休み無しで働かなくても、ある程度貯えに余裕がある。結果、彼の思考はここに行き着いてしまう。
 もう一度、殺人的スケジュールを見て、彼は溜め息をついた。

(俺、なんかセリス怒らしたかな……)

 どんなに頭を捻っても、セリスの意図がわからないロックであった。

 


第2話:天使の笑顔は悪魔的無邪気さ

 

「セ、セリス。人を採用する……とか、どうでしょうか」

 普段使わない敬語を7歳年下のセリスに上目遣いで口にする29歳。ケフカを倒してから3年間、ロックがこんな反応をするのは、必ず怯えている時だ。
 セリスも22歳になり、大人の女性らしさが見え隠れし始めている。美しいプラチナブロンドの髪をサラリと流して、セリスが振り返った。

「師走なんだから忙しいのは当たり前よ? ロック1人じゃないんだから、駄々こねないの」

 セリスは他のスタッフと話す時より、幾分か甘い声でロックを諭す。片目を瞑って可愛らしく合図を送ると、そのまま映像通信機器局へと去っていってしまった。
 可愛らしくウィンクされてしまったが、冷や汗が止まらないロックは固まったまま動けずにいた。
 そのフリーズ状態からロックを我に返したのは、鉄道開発所の研究スタッフからの呼び声だった。

「ロックさーん、今日、ドマで使用していた列車の図面が着ているんですがー!」
「すぐ行くー!」
(俺、朝の6時から23時まで働いてるんですけど…)

 今日も言えなかった。
 当初の予定は14時間労働。残業を合わせて、毎日17時間労働という奴隷のような働き振りを見せる最近のロックは、帰ってもシャワーを浴びて寝るだけの生活が続いている。
 幾ら出勤時間が10分以下とはいえ、こう毎日では身体も疲れが抜けなくなってきていた。身支度やシャワーで1時間、通勤往復で20分、食事の時間、を考えれば毎日4時間眠れば良い方だ。これ以上トラブルでもあれば、目も当てられない。
 セリスが働きたいように働かせていたが、現実とはなんとギャップのある生活なのか、しみじみと後悔している真っ最中だ。

(年かなぁ……セリスに触ってないのに、疲れて眠っちまうんだよな…)

 これもクリスマスから年末にかけて休むためだ、と自分に言い聞かせてみる。
 実の所映像通信所も鉄道開発所もまだ試験段階で開業出来ていない。そのため、今年の年末年始は全員休暇に設定されているのだ。

(セリスに触ってない事、怒ってんのかな)

 ロックも充分大人である。優先順位を理解して、セリスを休めたいという思いから無理には触れずに生活してきた。
 勿論、ロック自身も限界まで働いているのだから、睡眠欲に勝てないわけだが、セリスに触れていたいという気持ちがないわけではない。
 なんとか雑念を振り払って、鉄道開発の図面を見に行く事を決めて足を動かす。「入るぞ」と声を掛けて扉を開くと、そこには図面と共に、得体の知れない何かが鎮座していた。

「……」
「………」
「……なんだ、コレ」

 絶望感満載の表情をしたスタッフ全員に、ロックは思い切って聞いた。だが、誰も答えようとはしない。
 珍妙な雰囲気に耐えられず、口を開いてしまったロックの鼻孔に、砂糖が焦げた臭いと何故か磯の香りが漂う。既にこれだけで充分気持ちが悪い。
 見た目は、円柱型の平べったくて黒い何かで、上にはヘタを取らないイチゴが乗せてあった。

(ケーキの匂いとは、程遠い、よな)

 スタッフの1人が、涙を浮かべて呼吸を止めているのを見つけると、ロックは慌てたように室内の窓という窓を開けた。
 何かから目覚めたように他のスタッフも扉やカーテン、窓を全開にしていく。ガチャガチャ、バタッという音が何度かした後、スタッフ全員とロックは風上に立つ事を選んだ。

「で、どうしたんだ」

 事情を聞こうとした矢先、俯いて震えていた1人の男が、フォークを片手にキッと物体Xに向き直る。

「憧れのセリスさんの為なら―――!」
「よ、よせ! 止めろ!!」

 他スタッフの制止を振り切って、彼はフォークで黒い何かを刺し、一息に口に運ぶ。数秒後、絵に描いたように放物線を描いて口の中を吐き出した。

「「ウェッジーーーっ!!」」

 ドサリ、と倒れたウェッジという名のスタッフに全員が駆け寄る。ウェッジが意識を失う前に、口から焦げた何かを吐きながら呟いた。

「口の中で、しじみが、ジャリジャリする…」
「無理すんな、吐き出せ!」
「医療班を呼べ!」
「医療班!? 大至急、会議室にっ!!」

 一時騒然となった鉄道開発計画所の会議室で会議が再開されたのは、それから約一時間後の事であった。
 ロックは、慌てるスタッフを後目に、ケーキを持って資料室へ向かう。資料室のカメラを貸し出し用書類手続きを撮ってから、ケーキと共に廃棄物処理場へと足を運んだ。

パチリ。

 シャッター音が耳に残る。手持ちの折り畳み式ナイフで分断したケーキを、撮影したのだ。
 少し考えてから、指先でケーキを少し崩すと、躊躇いもなく口に含む。口の中で、砂抜きされてないしじみの味と、炭化した小麦粉の味に、分量を間違えたと思われる蜂蜜の味が広がった。
 飲み込まずに、すぐさまゴミ箱へ口に含んだ物を吐き捨てる。

「指摘どうこう以前だな……」

 普段のロックならば、セリスがどんな失敗をしても必ず食べ、何が足りなくて何が間違っているのかを確かめる。そして、指摘するのではなく次に作る時に『こうしたら良い』とアドバイスするのだ。

(しかし、セリスが此処まで失敗するのは見たことないな)

 負けず嫌いである彼女の性格を思えば、見た目から失敗作など出来る限り他人には見せたくない筈だ。むしろ、こっそり棄ててしまうだろうとロックは考える。

「……まぁ、聴いてみる方が早いか」

 そっとケーキをゴミ箱に処理すると、いつも通りの足取りで会議室へとロックは戻っていった。
 その後、どのスタッフに聞いてもあの謎のケーキもどきについて口を割るスタッフはいなかった。
 倒れたウェッジは、帝国軍に居た頃からセリス将軍信奉者である。意識を取り戻した後も首を振るだけで、仲間から涙とともに「よくやった」と抱き合う謎の感動のシーンが展開されていた。
 感動のシーンを見れば見る程、セリスじゃない筈だという信用が根幹から揺らぐ。

「あれは……セリスなのか」

 恐怖に満ちた顔で、思案を巡らせた。最近までセリスに色んな料理を教えてきたロックには、俄かに信じがたい事実である。
 だが、ウェッジが言った「セリスの為」という言葉は、どうやってもあの致死量ケーキの作成者がセリスである事を結び付けた。全員口を割らなかったのは、セリスとロックが恋仲である事を気遣っての事かも知れない。

(帰ったら、話を聞いてみよう。…聞けると、いいんだが)

 会議室に行く前に優しく笑ったセリスを思い出す。
 仕事の時とは違う、自分だけに見せる穏やかな天使の笑顔。無邪気に微笑む彼女は、計算尽くなのか、天然なのかを少しだけ考えて――自分の為にその思考を取り払った。

(会議室にあったって事は、俺宛でもあるよな?)

 俯きながら考え事をしていたロックは、いつもの街灯の足元を見付けて顔を上げた。すぐ傍にある2人の家を見ると、明かりが灯っている。
 ゴクリと唾と覚悟を飲みこむロックに、家の扉が薄暗く見えるのだった。


第3話:回るのは視界だけで充分だと

 ウェッジの悪夢は12月2日の事。それから鉄道開発計画所には、毎昼、悪夢が訪れるようになっていた。

「今日で三日目だぜ…」
「医療ゴミとかで…廃棄処分しませんか」
「そろそろセリスさんには丁重にお断りした方が…」
「……お前、あの笑顔を断れるのかよ」

 彼が扉を開ける前のスタッフの声は顰められていた。だが、諜報活動を得意分野としたロックには慣れた音域であるが故に、しっかりと耳に残る。
 溜め息混じりに今日も会議室の扉を開ければ、新しい犠牲者を知らせる声が響き渡った。

「…クリームが、ぶよぶよ…して、ザラザ…ラ…する…」
「「ビッグスーーー!!」」

 ウェッジの出来事があったその日、ロックはセリスに聞こうと試みた。だが、一人分の食事をテーブルに乗せてセリスは先に眠っており、一枚の手紙が置かれているだけ。

『明日から私、少し遅くなるかも。ごめんなさい、ちゃんと休んでね』

 ロックは、料理を指先で一口分摘んで口に含んだ。料理は質素な野菜と肉の炒め物だったが、基本は間違っていない。

(どうしても、結び付かないんだよな……あのケーキと)

 部屋の寝室を開けて、セリスの寝顔を確認する。金糸の海に沈んだセリスの寝顔は、何もかもを吹き飛ばしてロックを穏やかな気持ちにさせた。

(……何かあるなら、話してくれるって、信じていいよな?)

 ゆっくり扉を閉めて、セリスの額にキスをする。少しセリスが動いたが、起きる気配は無かった。
 明日も早い。セリスもここが正念場と、努力している筈だ。彼女の努力を、全力でしか向き合えない純粋さを、いつも間近で見てきたロックだからこそ、セリスを起こさずに眠りに就く事を決めた。

「明日から、入れ違いになるかもしれないけど…頑張れよ。俺も、頑張るから」

 願い虚しく、その日を境にしてセリスとは全く顔を合わせなくなり、今日に至る。
 ロックもそれから考えてみたが、忙しく働いているセリスに、あの殺人兵器レベルの“菓子を模した何か”を作る時間は無い様に思う。

(やっぱり、あの時起こして聴くべきだったのか)

 自分の選択は間違っていないと思考を振り払う。
 所詮、良くも悪くもロックの推測でしかない。それは理解しているが、なんとかセリスとあの菓子を結び付けない方法を探していた。自分への気休めにしかならないが、どうしてもロックはセリスを信じたかったのだ。
 本人に確認が取れない以上、真相は闇の中、である。

(いや、菓子を模してすらいないか……)

 今日の出来栄えを、ロックは他スタッフの目を盗んで確認した。大きなテーブルの中央手前には、少しパーツの欠けたクリームの山が鎮座している。
 『色が白いんだな』――それ以外はよく理解出来ないので、全く感想が浮かばない。一見しただけでは判らない形容しがたい何か、である事だけは相変わらずだった。

(……えびの、しっぽ?)

 クリーム状の山に不似合いなピンク色が飛び出ている事に気付いていたが、見ないことにした。ロックは、異臭を放つそれを持ってゴミ集積地へ向かう。
 そして、1日目と同じように写真を撮ってから口に含むと、躊躇いもせずにケーキ本体と口の中の異物を廃棄した。

「医療班、大至急会議室まで、繰り返します、医療班は大至急……」

 会議室からは、今日も医療班を呼び出す無線が鳴り響く。会議室に戻ると、今日の犠牲者であるビッグスが、完全に意識を失っているらしかった。
 このままでは、いつスタッフが入院して徹夜続きになるか解らない。そう判断したロックは、医療班が扉から駆け込んでくるのを確認してから、会議室を飛び出した。

(セリス、まじでどうしたんだよ)

 映像通信開発計画所へ、ロックは走る。近い場所の筈なのに、リフトに乗る一分一秒すら苛立たしい。周囲の挨拶も煩わしくなり始めた頃、ようやく映像通信開発所へ辿り着いた。
 受付嬢のいるカウンターに苛立たしげな表情を隠さずに近付くと、ロックは声だけを無感動に発した。

「悪い、セリス呼び出して」

 受付嬢が「は、はいっ」と少し顔を赤らめながら何処かに通信を始める。何かを話し取次ぎを繰り返す受付嬢を見て、待つ時間にさえ苛々が募る。ようやく受付嬢がロックに向き直ったかと思うと、彼女は大変申し訳なさそうな声を出した。

「すみません、シェールさまは席を外されておりまして……」
「……そっか、時間を取らせてすまない」


 苛立つ自分にさえ苛立っている事に気付いたロックは、小さく深呼吸する。よく見れば、何故か受付嬢の人数が増えている気がしたが、ロックは気にしない事にした。

「いえっ、あ、あの伝言があれば……」
「いいんだ。また来るよ」

 受付嬢の言葉を遮って背中を向けたロックは、今来た道を戻り出す。顰めた黄色い声が後ろでしていたが、思考が手一杯のロックは全く気が付かない。

「(ロック・コールさんよね、あれ!)」
「(生で初めて見た~!)」
「(年上なのに、超未成年っぽいとか!タイプかも!)」
「(あたし、鉄道開発に入社すれば良かったなぁ)」

 映像通信開発計画所も、鉄道開発計画所も、ロックとセリスが設立に関わっている為、有名人ではある。だが自分の童顔が、まさか若い女子スタッフに受けているとは気が付かないまま、ロックはその場を後にした。
 ロックの思考がセリスで占められるようになってから、自分の意識とは無関係に、無頓着を装うようになっていた。自己防衛の為か、無意識下レベルでセリスへの想いが強くなっている為だろう。

(すげー、イライラする)

 次は鉄道開発スタッフに、もう一度だけ話を聞いてみようとロックは思案する。元帝国兵が多いので、簡単には口を割らないだろうが、このままではいけないと感じていたのだ。
 戻って会議室の扉を開けると、今日も1人分――犠牲者分、席を埋める者が足りない会議室が待っていた。

(このままでいるのは、俺にとっても、セリスにとっても良くない事だろ。それなら、)
「……会議を始める前に、大切な事を言っておきたい」

 今日のロックは、いやに灼かだったと後の鉄道開発室スタッフは話していた。