「さあ、****ましょう」(in DFF)


 全く知らない場所に、青年はいた。髪質の細いブルネットの髪に、ペイズリー柄やストライプ等を彩色したバンダナが巻き付けられている。
 夢の中のような光輝く場所で、青年は女神に告げられた内容を反芻した。細い指先でくるくると器用にダガーナイフを回すと、腰に納める。

「光の戦士、ね。そんな大層な事は出来ないぜ。俺、わりと普通の人だし」

 光の女神コスモスが微笑む。

『これは、世界総ての未来を闇から護る16回目の世界。…ですが、貴方の罪を償う旅でもあります』

 顔色を全く変えずに青年は笑う。

「償えって言われても、過去を忘れちまうんじゃな」

 青年は、過去に滞在を侵した。死に逝く人間の命を留め、甦らせようと身体の時を止めた。
死んだという、事実を歪めた。

「俺は、…」

 俯いた瞬間に走る鋭い殺気。自分より高い場所から降り注ぐそれを反射的に彼は身を翻して避けると、先程まで青年が居た場所は氷の柱が出来ていた。
 小高い丘の上から飛び降りる細身でプラチナブロンドの女性。藍色の青年と対照的に黄色のジャケットとパンツ。もう一度その女性から放たれる氷結の魔法が青年を襲うと、翠色の髪を結い上げた少女が青年の前に躍り出て炎の魔法で大きな盾を作り上げた。
 プラチナブロンドの女は騎士剣を抜き放つと、舌打ちを隠そうともせずにアクアマリンの双眸で青年と翠色の髪を結い上げた少女を睨み付ける。

「お前か、皇帝の邪魔をする反逆者め」
「待って!私、貴女を知っている気がするの!」

 青年がその言葉に目を細める。そうか、と突如として彼は理解した。
 人によって記憶に差があるのか、と。

「邪魔すんなよ、ティナ。せっかく此処には俺の過去も未来も、関係がないんだ」

 青年の言葉に、ティナは驚いて青年を振り返る。「私を、知っているの」と彼女が呟いた言葉は、荒野の風にかき消された。

「此処にいるのはな。遠い昔に、真実を歪めたロック・コールっていうただの男と、――セリス、俺が守るべき――俺の女だ」

「あぁ、私はお前など何も知らない。……だが、お前を見ていると頭の中がざわつくんだ!」

 問答無用とばかりに斬りかかるセリスに、ロックは両手に持った短剣でそれを受け流した。
 剣戟が風を切り、時折セリスから放たれる氷結魔法に、ロックは炎を纏う破壊と再生の幻獣フェニックスを呼び出して応戦する。

「私は、常勝将軍セリス・シェール。反逆者と知り合った覚えなど、無いっ!」

「……あぁ、いいぜ。来いよ」


「さあ、いましょう。」
[FF6 in DISSDIA]


 これがこの世界での、2人の出会い。