君の傍で


 風が優しく金色の髪を揺らす。日差しがゆっくりと降り注いで、ストレートの彼女の髪に天使の輪を作る。
 飛空船、ファルコンの看板で、褪せた藍色のジャケットを着た背中へもたれ掛かって目を伏せている。ヘーゼルネットの髪が金色の髪に近付いて幸せそうに眠る彼女に微笑んだ。

「セリス」

 彼は声をかける。
 青年の声は聞こえていないようで、セリスと呼ばれた少女は目を覚まさない。
 革手袋をした右手で少女のもたれ掛かっていた体を背中から、そっと自らの胸へ動かした。それに気付いてセリスは瞳を少しだけ開く。

「…ロック?」

 ん、と微笑んだ青年は寝ぼけ眼の少女の頭に手を乗せた。
 セリスは、ロックの胸に顔を埋め直して体を丸く収めると、「手」と右手をロックの左手に伸ばした。
 ロックの右手はセリスの背中から腰に回されているので、彼の空いた手は左手しかない。仕方なさそうに笑うと、ロックは左手を彼女の右手へ差し出した。
 セリスはその左手を両手で自分の胸元へ持ってくると、革手袋を脱がす。口を尖らせた少女の行動に任せるままに、ロックは優しい目でされるがままにする。
 革手袋をロックの膝に置くと、瞳を伏せ、満足げに両手で彼の左手を抱き締めた。

「やっぱり、いつもロックの本当の近くがいい」

 目を僅かに見開くと、「参ったな」と少女の今の行動の意味を知るのだった。