request No.[ゴゴティナ]

同じ過ちを貴方と堕ちて


 

 無駄だと解っていても、翡翠色の髪を持つ娘は誰かに聞かずにはいられない。もう繰り返し聞き続けてる言葉は、誰にも答えて貰えなかった。

(愛を知りたい)

 モブリズで知った愛の答えを、同じように異性には返せないティナは、誰もが知る恋愛感情としての愛を知りたかった。セリスがティナと話している瞬間に頬を染めたり、エドガーが女性によく話しかけているその意味を。
 最初は、純粋にその近い感情との違いを訊いて回っていたのだが、誰もが『そのうちにわかるよ』とだけしか答えないのだ。

(何回も聞いて違う答えが返ってくるわけもないし)

 ならば、答えを貰えなくても、文句も言わずに聞いてくれるゴゴならば、何回尋ねてもいいのではないだろうかと思い至る。きっと、ティナの言葉を鏡の様に繰り返して答えるだけだと想像して、ティナはゴゴに語りかけた。

「ねぇ、ゴゴは愛って知ってる?」
「ねぇ、ゴゴは愛って知ってる?」

 鸚鵡返しにティナの言葉をなぞるゴゴに、翡翠色の瞳は薄桃色の唇から溜息を一つ零した。同じように、ゴゴもティナと同じ色の溜息をひとつ零す。
 頬杖をつくその仕草までもが一緒。なるほど、自分はこう見えているのだなとティナが理解してその先を口にした。この先は、誰にも問えない言葉を口に出すのだ。その仕草を見てから他の人間に同じことを聞いていいかを確認すればいいというもの。
 消極的な自虐の言葉を、ティナと同じ仕草のまま固まったゴゴに彼女は投げつけた。

「……私が人間じゃないから、わからないのかしら」

 繰り返されるはずの言葉を、彼女は期待した。

「お前は、人間じゃなければ愛せないと思うのか?」
「えっ……」

 ゴゴの覆面の奥が静かに光が燈る。暗い暗い、目の色すら見えないゴゴの奥底に何があるというのだろう。
 その言葉の意味は、人間ではない事の深淵なる遠い意味を思わせる。ティナ以外にもこの言葉を使うその意味を、ティナだから正しく把握出来た。

(人間じゃなくても……)

 ああ、とティナは理解する。そして、ひたすらに安堵した。
 彼も、自分と同じなのだと――。

 

-fin-